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ねぎとろ丼

ねぎとろ丼

百合ごっこ遊び

※この作品は『蒼と紅』の後日談の様なものになっています。そちらの方を先に読んで頂けると、より楽しめるかもしれません。
 百合成分が多分に含まれているものなので、シチュエーションや百合そのものを楽しみたいだけな方なら何の問題もありません。

   『百合ごっこ遊び』


 近頃の私フランドール・スカーレットは寝る前、布団に潜ってある遊びをするようになった。
 それは誰かとじゃれあう想像をする遊びである。
 例えば稀に遊びに来る慧音から淫らな行いについて教わるという場面を妄想して楽しむのだ。
 まず慧音が私の首筋や髪の生え際を舌で舐め回して愛撫。
 私の名前を優しく囁き、力強く抱きしめる。次に慧音が私の不思議な羽を弱く握りしめ、舌を這わせてみたりして弄ぶ。
 その行為から来る刺激に私は艶な声を漏らして耐えるだけ。私の鼓動が激しくなっていくばかり。
 その胸に慧音の手が置かれて「フラン、すごく感じているんだな」なんて恥ずかしいことを言い、私の腰に手を回してくる。
 私の呼吸は途切れ途切れ。慧音が休ませてあげようと言って抱きしめるが、余計に興奮して過呼吸みたいになってしまう。
 少しだけ落ち着いたら、見詰め合って相手の名前を呼び合って口付けの時間。
「フランドール様」
「へえっ?」
 咲夜の声がドア越しに突然聞こえた。不意だったので驚き、変な声が漏れた。
「お休み前のお茶でもと思って用意しましたが、いかがでしょう?」
「い、いらないわ。もう休みたいの」
「そうでしたか、余計な気遣いですみませんでした。おやすみなさいませ」
「うん、おやすみ……」
 私のいけない行いを覗かれたりされなかっただろうか。
 咲夜にそんな趣味は無いと思うが、変な声を聞かれてしまっていたら恥ずかしい。
 何より、慧音とまぐわっている妄想をしている最中に漏れた自分の喘ぎに気付かれていたら非常に困る。
 咲夜が「フランドール様がこんないやらしい声を漏らしていた」なんて告げ口をお姉様にするとは思いたくないし、誰にも聞かれたくない。
 ドアの向こう側は地下室ながらの暗がり。咲夜が他所へ行って誰もいなくなったことを確認し、もう一度布団の中へ潜る。
 そしてまた誰かとじゃれあうことを必死に想像し、自分の手足や腹を撫でる。
 気がつかないうちに夢の中へ入り、夢の中でも同性と絡む映像になる。
 目が覚めれば夢の出来事を思い返し、体が熱くなり始める。近頃そんな風になった。
 それはお姉様と仲直りし、自由に遊びまわることを許されて何週間か経ってからの話。
 お姉様と毎日同じベッドで寝るようにし、軽いお喋りをしてから寝るようにしていた。
 そのときからお姉様に甘えて抱きしめてもらったりしていたが、抱きしめてもらう度に胸がドキドキした。
 口付けも要求した。その都度、体中が痺れる感覚に犯された。
 しかし何度も求めると変態な妹だと思われるのではないかと考え始めた。嫌われてしまうのは嫌。ふしだらな妹だと疑われては困る。
 それから私は寝床を地下室に戻し、寝るときは一人で寝るようにした。
 にも関わらず、要求不満であることに変わりはない。むしろ最近は酷くなっていく一方。
 時々美鈴とじゃれあって肌の温もりを得ているが、美鈴ではどうしても遠慮されて痒いところにまで手を伸ばしてくれない。
 お姉様にもう一度頼むなんてもってのほか。なら誰に頼めばいいのか。
 そう、慧音だ。外に出歩き始めて初めて出来た友達である慧音。その、大好きな慧音といくらでもくっついてみたい。
 慧音に会いたい。いつも妄想していることを実際にしてみたい。慧音に抱きしめてもらいたい。

 目が覚める。今は陽が沈みきった辺りの時刻だろうか。今日の夢は咲夜と二人きりでお茶をしている夢だった。
 ティーカップに注がれた紅茶と真っ赤なスパイスを、スプーンで混ぜ合わせもらっているシーンだった。
 自分はそのとき見えた服の袖から見える手首に時めいていた。
 しなやかな腕の線。うっすらと見えた血管。スプーンを操る手首のスナップ。それらに魅了され、見つめているのに精一杯だった。
 どうして夢の中の私は咲夜の手首を見てうっとりしていたのだろう。わからない。
 ただ、自分がどれだけ肉欲に支配されているのはわかった。

 今日はどんな服で夜の外へ出かけようか。そう悩んでいると、ドアが叩かれた。
「フランドール様、お目覚めですか?」
 咲夜の呼び声。夢の出来事を思い出し、緊張してしまってすぐに返事できなかった。
「……な、何?」
「ハクタク、ではなくて慧音が遊びに来ていますが」
「すぐに連れて来て!」
 これは幸運である。慧音の方からやって来てくれるなんて。咲夜が慧音を呼びに行ったのを確認して急いで着替えた。
 夢の出来事なんてもうどうでもいい。慧音に色んなことを教えてもらおう。
 綺麗に洗濯された帽子を被り、慌てて胸のリボンを締めなおす。靴の埃を払い、服についた糸くずを摘んで床に捨てた。
 もう一度ドアが叩かれ、今度は慧音が私の名前を呼んだ。うれしくなり、勢いよくドアを開け放つ。
「慧音っ」
「やあ、フラン。いい子にしていたか?」
「勿論!」
 慧音に飛びつき、慧音が苦しまない程度に抱きしめた。
 ドアの先に見える地下の廊下を見つめ、誰も地下に入っていないことを確認してドアを閉めた。
 慧音に気付かれない様注意して鍵を閉めておく。
 慧音にじゃれあうことを要求しても、誰かに邪魔されたりすれば困るから。でもこれで大丈夫。
「まったく、フランはいつも私に甘えてばかりだな」
「け、慧音は……こういうの嫌?」
「そんなことないぞ」
「えへへ!」
 私が甘えてればそれに応えてくれる慧音。たまには意地悪されるぐらいでもいいのに、慧音は絶対にそんなことしない。
 たまにはそういうプレイでもいいのに。
「フラン、今日は竹とんぼを持ってきたんだ。やってみるか?」
「竹とんぼ?」
「ああ、竹とんどだ。とんぼの様に、とまではないかないが飛んでいくおもしろいものだぞ」
「ふーん」
「なんだ、興味が無さそうだな。止めておくか?」
「ち、違うの。今日はね、慧音に色々と教えてもらおうと思ってたの」
「ふむ。何かわからないことでもあるのか?」
「う、うん……。あのね、私最近ずっと変なの」
「というと?」
「なんだかね、女の人のことを想うと凄く体が熱くなるの」
「……男ではないのか?」
「うん。慧音やお姉様、美鈴や咲夜の体を見ているとなんだか恋しくなって、胸がドキドキするの」
「そ、それはまた……変わってるな」
「どうして?」
「フラン、それはきっと恋心というものだ」
「……?」
「フラン、お前は少し変わっているようだ。同性愛の性癖を持っているということらしい」
「ふえ? それって、フランが変な子って意味?」
「正直に言えば、そうなるな……。恋しい、というのは普通異性に対して燃やされる感情なんだ。通常、同性に対して盛んになるものじゃないんだ」
 知らなかった。自分と同じ女性に興奮することがいけないことであったなんて。それなのに私はお姉様の紅い唇を見つめたりしていた。
 何気ない仕草のときに見える美鈴の腰のくびれ、咲夜の揺れる髪、喘息の発作を起こした直後の荒いパチュリーの吐息。
 それらに惹かれていた私はすでに変態だったなんて。
「フラン、聞いてくれ」
 慧音が私の手を掴み、まっすぐに見つめてきた。ただそれだけのことにも鼓動が激しくなる。
「同性愛者であることは不思議じゃない。どこの土地でも、どこの国にも、どこの地域にでも稀にそういう者はいるんだ。正常である」
「そ、そうなの……?」
「勿論、異性同士でくっつくことが普通であるから、そういう者達から見れば異常に見えるだろう。だがな、大昔の偉人達にだってそういう者も居た。同性愛者であることに嘆く必要はない。胸を張ればいいんだ」
「慧音……」
「フランが寂しいというのなら、お前の望みを叶えてやってもいいんだぞ」
「え?」
「私もお前が愛おしくて堪らないんだ。抱きしめてもいいか、フラン」
「うん……お願い」
 私は慧音をベッドへ誘い、寝そべった。慧音が上にかぶさって恥ずかしそうにする顔を見せる。
「じゃ、じゃあするからな……」
「うん。私に色んなこと教えてね、慧音」
 慧音はまず私の手を取って軽く握った。指を絡めあったり、指をしゃぶってもらったり。
「指舐められたら喜んでいいの? その……くすぐったいだけなのに」
「ああ、初めはそういうものなんだ。次第にそのくすぐったさが快感に変わってくるんだよ」
「ふーん。慧音は詳しいんだね、そんなエッチなことに」
「なっ……! い、いや私はフランのことを想って必死にしているだけで……そのなんだ、別にいやらしいことに興味があるわけじゃなくてだな……」
「慧音、答えになってないよ」
「……あ、あんまり私を苛めないでくれ!」
「ふふ、慧音可愛い。まあいいよ、続きして」
「まったく……お前と言う奴は、油断できんな」
 慧音をからかうとこんなにも楽しい反応が返ってくるなんて。これからもっと慧音をいじめてみよう。
 でも今は慧音にはいけないことをもっと教えてもらいたい。同性愛が異常だというのなら、その禁忌をもっと破ってみたい。
 慧音は私への愛撫を再開し、私の二の腕を舐め始めた。笑いを堪えるのに必死である。
 でも慧音の一生懸命な姿を見ているとそれが失礼に思えてくる。
 だけどくすぐったさは我慢しきれない。
 笑いすぎて呼吸困難になりそうなところを見た慧音が、休み休みでしてもらえるよう気を使ってくれた。
「ねえ慧音……キス、して欲しいな」
「駄目だ。もう少しだけ、おあずけ」
「焦らすなんて、意地悪」
「そう言うなよ。物事には順序というものがあると思って諦めてくれ」
 慧音の舌は登っていき、首筋へ到達。首。それは吸血鬼が牙を突き立てて血を吸う場所。
 自分が吸血鬼であることを再確認し、同時に血が欲しいと思った。
 首筋からうなじを可愛がられ、耳を責められる。その次にようやく私の顔。私の頬を掴んで首を固定されての口付け。
 強請ってはいたが、いざしてもらうと驚いて反応できなかった。瞬きすることすら忘れ、ただ慧音にしてもらったことに感動するだけ。
 心臓が元気に暴れ周り、体中の血液が休むことなく駆け巡っていく。
 痒いところをようやく刺激してくれた感覚。どこか満足に感じ、自然と口がにやけた。
 慧音の口がそっと離れていく。慧音のほっぺは紅潮し、目が潤んでいた。
「どうだ、フラン? ちょっとは収まったか?」
「……うん。でも、もっとして欲しいな」
「仕様のない奴だな……。ほらフラン、目を閉じてご覧」
 慧音に促され、目を瞑った。今度は肩を持たれ、ゆっくりと熱い吐息が近づいてくる。もう一度口付け。
 今度は唇を擦りあうだけに留まらず、慧音の舌が侵入してきた。口内のありとあらゆる所へ触手を伸ばしてきた。
 歯茎に血の巡った熱い舌を押し付けられると、酷く興奮した。
 彼女の唾液と私の唾液が口の中で混ざり合っていることに気付くともっと興奮した。彼女のものと私のものが今混ざり合っているのだ。
 キスだけでは足りない。もっと何かをしたい。もっと過激な行為をしたい。
 自ら慧音を求めた。こちらから慧音を抱き寄せ、自分からも舌を入れた。慧音の真似をする様に舌を使った。
 慧音は驚き、息苦しそうにした。口を離して呼吸を整えさせるとディープキスを再開した。
 何か言おうとする慧音だが口を塞ぎ、言葉を奪う。目をとろんとさせる慧音を見つめていると心が躍った。
 体の位置を反転させて慧音の上に乗っかった。今度は乱暴に唇を奪う。服の上から柔らかそうな乳房を圧迫するように触れた。
 苦しそうにするが気にしない。もっと肌を重ねたい。もっと体を擦り付けあいたい。
 慧音の首筋を凝視。牙が疼いた。吸血鬼としての本能を呼び起こされる。血が飲みたい。吸いたい。他人の体液を奪いたい。
 尖った犬歯が痛みだす。私に血を飲めと急かしているようだ。歯軋りでは誤魔化せない程に切望している。
「や、やめろフラン! それだけは……勘弁してくれ!」
「お願い……頂戴、慧音の血液! 血! 血が飲みたいの!」
 慧音が私を剥がそうと力をこめて押されるが、妖精の様な非力さで押されているように感じなかった。
「はぁ、はぁ……が、我慢出来ないの、慧音」
「お、落ち着いてくれフラン! お、お前の姉の言葉を思い出せ!」
「お姉さまの、言葉?」
 お姉様の言葉。それは何のことを指すのだろうか。お姉様が私に言った、二つの約束のことなのだろうか。
 そういえばお姉様が言っていた。人間には絶対に手を出してはいけないと。でも慧音は半分獣だから、ただの人間でないはず。
「満月の夜以外はただの人間なんだぞ! その人間を、襲ってはいけないと……聞いていないのか!?」
「……あ。そっか」
 慧音の体質を忘れていた。彼女は完全ではないのだ。平常時はただの人間なんだったんだ。
 でも血を求めるこの衝動はどう処理すればいいというのだろう。論理的な思考が働かなくなっていく。理性が本能に負けていく。
 このままでは自分を抑えることができず、そのうち慧音を襲ってしまうのではないかと思い始めた。
 何もしなくても体が震え始めた。自分で自分の体を抑え付けるが、今にも暴れそうな程衝動に支配されている。
「フランは、血が飲みたいんだろう?」
 慧音の口が震えている。きっと私が怖いのだろう。吸血鬼の餌になるところだったから。もしかすれば私が本当にそうしてしまうかもしれないから。
 それでも慧音は私をじっと真正面から見つめる。やっぱり慧音は優しい。とても良い人だ。
 殺されるところであったというのに、その相手を救おうとしてくれる。
「フラン……座って。し、舌を出してご覧」
 慧音は自分の指を歯に引っ掛け、自身の皮膚を傷つけると私の舌へ血を滴らせた。
「ど、どうだ……? 美味しいか? 間違っても噛み付いたりするんじゃないぞ?」
「ん……はふ……おいひいよう……」
 舌を懸命に伸ばし、血を一滴一滴受け漏らさないよう注意して犬歯へ流し込む。
 犬歯から少量ではあるが血を吸い上げると例えようが無い程の大きな快感に襲われた。
「これで少しは収まるだろう」
「んん……!」
 まず歯の中に通っている神経に電撃が流れ込むような感触が来る。勝手に声が漏れてしまう程気持ち良い。
 次に吸い上げた体液は管を通り、消化器官へ運ばれる。未知の快楽に背筋が自然と反った。
 股から下、脚全体に力が入らなくなって怖がっているかのように震えだした。頭の中が明滅し、何も考えることが出来なくなる。
「あっ! ううっ! はぁ、はぁ……」
「ど、どうしたフラン? 何が起こったんだ?」
「き、気持ち良いの……すっごく、気持ち良いの……凄い、まるで天国に居るみたいで……」
「そうか。そ、それは良かったな……」
 もっと血を吸ってみたらどうなるんだろう。僅かな量を飲んだだけでこんなにも体が悦ぶんだ。
 人一人分の血を全て吸血すればもっと気持ちよくなれそうだ。
 でもそれはできない。ここで我慢。慧音がこれだけしてくれたことに感謝し、満足してしまわないといけない。
 事が済んでからも暫く動けなかった。要求を満たしたのに、今度はそのことに体が反応して痙攣した。
 痙攣する度頭が馬鹿になって何も考えられなくなる。 
 その状態が静まった頃、締めにと思ってもう一度キスをした。
 改まって慧音にお礼を言うと慧音は顔を赤くして謙遜した。
 いちゃいちゃすることを十分堪能したと察したのか、慧音は衣服の乱れを正した。
「フラン、今日はこの辺にしよう。そろそろ戻って休まないと、明日に響いてしまう」
「うん、わかった。外まで送るわ」
 慧音はたくさん汗をかいたみたいで、しきりに額を擦っている。折角なのだから湯浴みをしていけばいいのに。
 でもそうなったらまた何かと強請ってしまいそうだから、今度の楽しみに置いておく事にしよう。いつか背中を流してもらいたい。
 地下室を上がって廊下を渡り、玄関を開けて慧音が宙へ。振り向き、艶めしい表情で別れを告げて行った。
 なんだかんだ言って慧音も気持ちよかったのだろう。お互い気持ちよくなれたなんて良い事だ。これからも続けたい。
 ドアを閉め、鍵を捻ったところで背後に何者かの気配を感じる。それは私がこの世で最も尊敬する人、お姉様の気配。
「お疲れ様、フラン。楽しめた?」
「え、ええ。凄く、凄く気持ちよかったわ」
 お姉様が一歩近づいてきた。不気味に微笑みかけるその表情の迫力に負けて一歩引く。が、扉がそれを許さなかった。
「ハクタクの血は美味しかった?」
「……み、見ていたの?」
「さあ? 想像ぐらい出切るわ。だって、フランが余りも嬉しそうな顔してるんだもの。髪はボサボサでリボンは曲がっている。そんな格好じゃあ、ベッドで淫らなことをしたことぐらい誰でも察せるわ。そして吸血鬼が淫らな行いの果てに求めるもとと言えば、快楽と血液しか無いでしょう」
「……い、いけないことだった?」
「別に。あなたは確かに血を飲んだけど、ハクタクの首筋に牙を突き立てて直接血を吸ったわけじゃないんだから構わない」
「そ、そう……」
「しいて言うなら、姉の私に相談して欲しかった……」
「あ……」
「あなたと同じ吸血鬼なんだから、吸血鬼の悩みは理解できるわよ。まあ、今更言っても仕方のないことね」
 お姉様は言葉を区切り、私を押し倒した。咄嗟に抵抗しようとするが、お姉様と密着していると思うと緊張して何も出来なくなった。
「歯から直接血が飲みたいというのなら、私の首を使いなさい。他の誰かに牙を向けるなんて、駄目よ」
「は、はい……」
「それとも、先に血を吸われる感覚を教わってみる? マゾヒスト的快楽が得られるかもしれないわよ?」
「それもまた、楽しみですわ」
「ふふ、可愛い可愛い私のフラン……。もう今夜はパジャマに着替えてお休み。この続きはまた次の機会までおあずけよ」
「はい、お姉様。おやすみなさい」
 お姉様は蝙蝠になって漆黒へ消えて行った。服についた埃を払い、地下室へ戻ることにした。
 慧音とお姉様に囲まれ、可愛がられて生活していけるんだ。なんて幸せなんだろう。
 明日はきっと、爽やかな目覚め。

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